人事異動の季節です。この時期に会社の代表者である代表取締役が交代する会社もかなり見受けられます。代表取締役が交代するとどんな手続が必要になるでしょうか。
まず、会社の登記簿上の代表者を変更する登記を行わなければなりません。この登記が完了しなければ、新代表取締役の印鑑証明書も取得できませんし、銀行や役所に提出するための登記事項証明書が取得できません。
登記が完了すれば、金融機関へ登記簿を提出することになります。個々で注意が必要なのが、手形や小切手を決済手段として利用している場合です。手形や小切手を利用している場合、登記簿を提出したからといって、すぐさま新しい小切手帳がもらえるわけではありません。また、旧代表者名で振りだした手形についての取扱いも気になるところではないでしょうか。旧代表者名で振りだしていたとしても、振出日と代表取締役の交代日に齟齬がなければ有効な手形として当然扱われます。ですが、金融機関には事前に代表取締役の交代の予定を知らせておく必要があるでしょう。
代表者が交代するのは何も辞任や任期満了に限ったことではありません。不幸にも突然、病気や事故でお亡くなりになるケースもあります。その場合には葬儀などに追われながら登記の手続や銀行での手続を行う事になります。細かなことですが、取締役の全員の印鑑証明書の準備が必要にもなってしまいます。また、「死亡」という事実が戸籍に記載されるまで、1週間から2週間程度時間がかかることもあり得ますので、取引先や金融機関に十分に事情を説明することが必要でしょう。
昨年から法定相続情報証明制度がスタートしています。これは、これまで各金融機関や法務局などに、除籍謄本や改製原戸籍などの原本を持参し行っていた名義変更手続について、法務局が発行する証明書を持参すれば戸籍を提示せずとも手続が行えるという制度です。これによって、相続人はもとより、手続を行う金融機関などでも戸籍確認の手間が省けますので、名義変更のスピードアップにもなる有意義な制度です。まだまだ利用の伸びはこれからですが、当事務所でも今後ますます利用を促進していく予定です。
司法書士 渡邉健介