相続登記と賃貸

2018.03.27
相続登記と賃貸

 地主や家主の方が亡くなった場合、相続による名義変更手続きが必要となります。法務局で相続登記を行うことで、故人から相続人に名義を変更する事ができます。

 

 相続登記には故人の出生から死亡までの戸籍が必要となります。また、遺産分割協議書や相続人の印鑑証明書なども原本の提供が求められます。不動産の相続登記では預貯金の名義変更など他の手続と異なり、印鑑証明書に有効期限がありません。例えば5年前に取得した印鑑証明書でも利用することが出来ます。

 

 他人に貸している不動産を持っている場合、早めに相続登記をすることが求められます。借主の立場からすると、相続登記が完了していない場合、その土地や建物が誰の所有となったか明確ではなく、賃料の支払先に不安を覚えることが多いためです。

 

 「相続人代表者」と覚書を締結し、その方名義の口座に賃料を振り込むケースも散見されますが、確実な対応とは言えません。相続人全員が覚書に署名しているならまだしも、どなたかお一人が代表者を名乗っているだけである場合、最悪二重払いが必要となるケースもあり得るからです。表見代理が成立するケースもあり得るでしょうが、授権行為など難しい論点が目白押しです。

 

 貸主としては自分が確かに相続人であり、土地建物の所有者であることを示すためにも速やかに相続登記をし、借主に通知することが求められます。

 

 相続人の遺産分割がまとまらないことが懸念されるのであれば、遺言書をのこすか、生前贈与を検討することも大切でしょう。

 

 なお、未登記の建物の場合、市役所で賦課名義変更申告をすることで名義を変更する事ができます。未登記建物については登記簿がないため、誰が所有者かを証明する者としては固定資産証明書が利用できるでしょうか。ただし、これはあくまで市の課税評価額等を示すもので、所有権そのものを証明する資料としては弱い資料であることに注意が必要です。未登記ですので通常は抵当権などの担保権が設定されていることは稀でしょうが、担保権設定契約がされているかどうか、なんら証明ができません。賃貸物件が未登記である場合にも速やかに登記手続をすることをおすすめします。

 司法書士 渡邉健介