家族信託(民事信託)の使いどころ

2018.06.22
家族信託(民事信託)の使いどころ

●家族信託(民事信託)って何だろう?

家族信託(民事信託)という言葉を聞いたことがありますか?

信託銀行や投資信託とは違い、特にご家族に財産の管理を預け、認知症などにより財産を移転・運用できなくなってしまう様な「高齢化リスク」に備えたり、相続のルールを契約で修正することを目的として「契約」する制度です。

似たような機能を持つ制度には、「成年後見制度」や「生前贈与」、「遺言」があります。

ではこれらの使いどころ、メリット・デメリットは何でしょうか?

 

⑴生前贈与

文字通り、生前に、かつ認知症等で物事の判断がつかなくなる前に、財産の名義を変える手法です。

メリットは、すぐに名義が変わるので、名義を変えるという目的が直ちに生じることです。

デメリットは、贈与税や不動産取得税などの課税が生じるケースが多いことです。

 

⑵ 遺言書

遺言書も生前贈与と同様、生前に、かつ認知症等で物事の判断がつかなくなる前に作成するものです。

メリットは、死後のトラブルを防いだり、ご自身の希望にあった形での資産承継を可能にすることです。

デメリットは、お亡くなりになるまで財産は移転しないことや、他の相続人から遺留分減殺請求を受ける事があげられます。

 

⑶ 成年後見制度

認知症や障害等で物事の判断がつかなくなってしまった後、施設入所の契約が必要となったり、預貯金の払い出しなどを行う事が出来ない場合に利用する制度です。家庭裁判所で成年後見人として家族または司法書士・弁護士らが選任され、ご本人のサポートを行う制度です。

メリットは、本人が物事の判断がつかなくなってしまった後、第三者が本人に代わって契約したり、預金の払い出しを適法に行う事ができるようになる事です。

デメリットは、家庭裁判所の手続であるため、制度を利用する前、利用を開始した後、いずれも書類作成などの事務作業が必要になることがあります。また、司法書士ら専門家が後見人として選任された場合、月額2万円から5万円程度のコストがかかることです。(もちろんコストは財産額や事務内容により異なります。)

また、本人の財産を守るための制度ですから、贈与したり、売却することが困難となります。

 

⑷ 家族信託(民事信託)

家族信託(民事信託)は、契約によって行う制度なので、生前に、かつ認知症等で物事の判断がつかなくなる前にしなければなりません。

特に健康寿命から平均寿命までの間、約10年間の間に財産を運用したり、名義を変更する必要がある方にとって、利用価値のある制度です。

ご自身で資産運用が出来るのであればわざわざコストをかけて家族信託(民事信託)を行う必要はなく、また、死後に名義変更すれば十分という方は遺言書を利用すれば良いと思います。

メリットは、事前に契約を済ませておけば、判断能力を失ってからでも財産の運用や処分が出来る事です。また、相続の枠を飛び越えて、資産を承継する方を契約で指定することが出来る事です。契約で指定すれば、思わぬ相続人(配偶者の家系)に財産が渡ってしまう心配もありません。

 

いかがでしょうか?

資産承継の手法はケースバイケースですが、ご自身にあった手法を選択しましょう。そして選択肢の一つに家族信託(民事信託)も是非加えてください。