遺言書を作った後に変更したい場合の手続きと注意点|福井の司法書士が解説

2026.06.01
遺言書を作った後に変更したい場合の手続きと注意点|福井の司法書士が解説

遺言書は一度作ったら変更できない?

「父が10年前に遺言書を作ったけれど、家族の状況が変わったので内容を見直したい」「母の遺言書に書かれている不動産を売却してしまったが、どうすればよいか」といったご相談を、司法書士法人GKでは数多くお受けしています。

東京や大阪にお住まいで、福井・石川・富山にご両親がいらっしゃる方にとって、遺言書の管理や変更は特に気になる問題でしょう。遺言書は一度作成したら絶対に変更できないわけではありません。むしろ、状況の変化に応じて適切に見直しを行うことが、円滑な相続のためには重要です。

今回は、遺言書を変更したい場合の具体的な方法と注意点について、わかりやすく解説いたします。

遺言書を変更したくなる主なケース

家族構成の変化

遺言書作成後に起こりうる家族構成の変化は様々です。

  • 相続人となる予定だった子どもが先に亡くなった場合
  • 新たに孫が生まれた場合
  • 養子縁組を行った場合
  • 離婚や再婚により家族関係が変わった場合

財産状況の変化

長期間が経過すると、財産の内容も大きく変わることがあります。

  • 不動産を売却または新たに取得した場合
  • 株式投資や事業により財産が大幅に増減した場合
  • 借金を完済したり、新たな債務を負った場合

気持ちの変化

年月が経つにつれて、相続に対する考え方が変わることもあります。

  • 特定の相続人への配分を変更したい場合
  • 慈善団体への寄付を追加したい場合
  • 遺言執行者を変更したい場合

遺言書の変更方法

全部取消し(撤回)

既存の遺言書を全て無効にして、新しい遺言書を作成する方法です。最も確実で分かりやすい方法といえます。

手続きの流れ:

  1. 現在の遺言書を全て撤回する旨を明記した新しい遺言書を作成
  2. 公正証書遺言の場合は、公証役場で新しい遺言書を作成
  3. 自筆証書遺言の場合は、自分で新しい遺言書を作成
  4. 古い遺言書の原本を破棄(公正証書遺言の場合は正本・謄本を破棄)

一部変更(部分的な撤回と追加)

遺言書の一部分のみを変更したい場合の方法です。ただし、内容が複雑になりやすいため注意が必要です。

追加の遺言書(コディシル)作成

既存の遺言書はそのままにして、追加や修正事項のみを記載した補足遺言書を作成する方法です。欧米では一般的ですが、日本では混乱を避けるため、全面的な書き直しが推奨されることが多いです。

具体的なケーススタディ

ケース1:不動産売却後の遺言書変更

状況:福井県にお住まいの田中さん(78歳)は、5年前に「自宅と農地は長男に、預貯金は長女に」という内容の公正証書遺言を作成しました。しかし、昨年農地を売却し、その代金3,000万円を定期預金にしました。

問題点:現在の遺言書では、売却済みの農地について記載されており、3,000万円の定期預金については触れられていません。このままでは相続時に混乱が生じる可能性があります。

解決策:新しい公正証書遺言を作成し、以下の内容に変更しました。

  • 自宅は長男に相続
  • 預貯金(農地売却代金を含む)の70%は長女に、30%は長男に相続
  • 以前の遺言書は全て撤回する旨を明記

ケース2:相続人の変化に対応した変更

状況:石川県の山田さん(80歳)は、3年前に「財産は二人の息子で半分ずつ」という遺言書を作成しました。しかし、次男が昨年急逝し、次男には妻と小学生の子どもが二人います。

問題点:現在の遺言書では次男の死亡が考慮されていません。このままでは代襲相続により次男の妻と子どもたちが相続人となりますが、山田さんは長男により多くの財産を残したいと考えています。

解決策:遺言書を書き直し、以下の内容に変更しました。

  • 財産の80%は長男に相続
  • 財産の20%は次男の子どもたち(孫)に相続
  • 次男の妻への配慮として、一定期間の家屋使用権を設定

遺言書変更時の重要な注意点

形式面での注意点

自筆証書遺言の場合:

  • 全文、日付、氏名を自筆で記載
  • 押印を忘れずに行う
  • 訂正する場合は法定の方式に従う
  • 法務局での保管制度の活用を検討

公正証書遺言の場合:

  • 公証役場での手続きが必要
  • 証人2名の立会いが必要
  • 本人確認書類と印鑑証明書を準備
  • 財産に関する資料を事前に整理

内容面での注意点

遺留分への配慮:法定相続人には最低限の相続分(遺留分)が保障されています。遺言書で遺留分を侵害する内容にすると、後々トラブルの原因となる可能性があります。

具体性の確保:不動産については正確な地番や家屋番号を、預貯金については金融機関名と支店名を明記しましょう。

実現可能性の検証:遺言執行が実際に可能な内容になっているかを確認しましょう。例えば、相続税の支払い資金の確保なども考慮が必要です。

専門家に相談するメリット

遺言書の変更は法的な効力を持つ重要な手続きです。特に以下のような場合は、司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

  • 相続関係が複雑な場合
  • 財産の種類や金額が多い場合
  • 相続税の対策も含めて検討したい場合
  • 家族間での意見調整が必要な場合

司法書士法人GKでは、北陸地域にお住まいのご両親を持つ関東・関西在住の方からのご相談も多数お受けしており、オンライン相談やお電話でのご相談にも対応しております。遺言書の変更だけでなく、相続全般についてサポートいたします。

まとめ

遺言書は「作って終わり」ではなく、定期的な見直しが重要です。家族構成や財産状況の変化に応じて適切に内容を更新することで、相続時のトラブルを未然に防ぐことができます。

変更の方法は複数ありますが、混乱を避けるためには全面的な書き直しを行うことが最も安全です。また、変更を行う際は法的な要件を満たすことはもちろん、相続人間の公平性や遺留分への配慮も忘れずに行いましょう。

遠方にお住まいでも、専門家と連携しながら適切な相続対策を進めることが可能です。ご両親の遺言書について気になることがありましたら、早めに専門家にご相談ください。


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寄稿者:司法書士 渡邉 健介