遺言書に書けること・書けないこと|親の相続で失敗しないための基礎知識

2026.05.28
遺言書に書けること・書けないこと|親の相続で失敗しないための基礎知識

親の老後を考える時期に差し掛かった皆さまへ

東京や大阪で働きながら、福井や石川、富山に住む親御さんのことを思うとき、「遺言書って何を書けるんだろう」「親に遺言書を書いてもらいたいけど、どうやって切り出せばいいのか」と悩まれる方は少なくありません。

遺言書は、親御さんの最後の意思表示として非常に重要な文書です。しかし、何でも自由に書けるわけではありません。法的な効力を持つ事項と、そうでない事項があることをご存知でしょうか。

今回は、遺言書に記載できる内容と記載できない内容について、具体的な事例を交えながらわかりやすく解説いたします。遠方にお住まいの親御さんとの相続準備を進める際の参考にしていただければ幸いです。

遺言書に書ける内容(法定遺言事項)

遺言書に記載して法的効力を持つ内容を「法定遺言事項」といいます。民法で定められた特定の事項のみが、遺言書として法的拘束力を持ちます。

1. 財産の処分に関する事項

相続分の指定
「長男に3分の2、長女に3分の1を相続させる」といった具体的な相続割合の指定ができます。法定相続分とは異なる配分を希望する場合に有効です。

遺産分割方法の指定
「福井市内の自宅は長男に、預貯金は長女に相続させる」のように、具体的な財産の分割方法を指定できます。

遺贈
相続人以外の人(孫、お世話になった方など)に財産を譲ることもできます。「長年介護してくれた嫁の○○さんに預金100万円を遺贈する」といった記載が可能です。

2. 身分に関する事項

相続人の廃除・廃除の取消し
著しい非行があった相続人を相続から排除する「相続人の廃除」や、その取消しを遺言で行うことができます。

子の認知
婚姻関係にない相手との間の子を認知することも遺言で可能です。

3. 遺言の執行に関する事項

遺言執行者の指定
遺言の内容を実現する遺言執行者を指定できます。司法書士などの専門家を指定することで、スムーズな相続手続きが期待できます。

遺言書に書けない内容

一方で、どんなに強い思いがあっても、法的効力を持たない内容があります。ただし、これらを記載することが禁止されているわけではありません。

1. 法律に反する内容

遺留分の完全な排除
「長男にすべての財産を相続させ、他の子には一切相続させない」と書いても、遺留分(相続人に最低限保障された相続分)を完全に奪うことはできません。

公序良俗に反する内容
「相続人は必ず特定の宗教に入信すること」「結婚相手を指定する」など、個人の自由を過度に制限する条件は無効となります。

2. 他人の権利を侵害する内容

「借金は長男が返済すること」と遺言に書いても、債権者の同意がない限り、債権者に対してその効力は及びません。

実際のケーススタディ

ケース1:福井市在住のAさん(78歳)の場合

Aさんは福井市内に自宅と農地を所有し、息子2人が東京と大阪にそれぞれ住んでいます。長男は会社員で帰省の頻度は少ないものの、次男は頻繁に帰省して農地の管理を手伝っています。

有効な遺言書の記載例:
「福井市○○町の自宅と農地は、日頃から農地の管理を手伝ってくれている次男○○に相続させる。預貯金については長男○○と次男○○で2分の1ずつ相続させる。」

この場合、具体的な財産の分割方法が明記されており、法的効力を持ちます。

ケース2:石川県在住のBさん(82歳)の場合

Bさんには娘が1人いますが、長年音信不通です。代わりに近所の方や介護施設の職員の方に大変お世話になっています。

注意が必要な遺言書の記載例:
「娘○○には一切相続させず、お世話になった○○さんにすべての財産を遺贈する。」

この場合、娘さんには遺留分(財産の2分の1)があるため、遺言どおりの実現は困難です。司法書士法人GKでは、このような複雑なケースについても適切なアドバイスを提供しています。

付言事項の活用

法的効力はありませんが、遺言書に「付言事項」として想いやメッセージを記載することは可能です。

付言事項の例:

  • 「長男には仕事の都合で帰省できないことを理解している。しかし、家を守ってくれた次男により多くを残したい」
  • 「兄弟仲良く、お互いを支え合って生きていってほしい」
  • 「財産の分け方について恨まれることがあっても、これが私の最後の願いです」

このような記載により、相続人間のトラブルを防ぐ効果が期待できます。

遠方にいる親御さんとの遺言書作成

東京や大阪にお住まいの方が、北陸の親御さんの遺言書作成をサポートする際のポイントをご紹介します。

1. 早めの話し合い

「遺言書を書いて」と直接的に言うのは難しいものです。「将来の相続について心配している」「専門家に一度相談してみませんか」といった形で、まずは話し合いの機会を作ることが大切です。

2. 専門家への相談

遺言書の作成には法的な知識が必要です。地元福井の司法書士に相談することで、適切な内容の遺言書作成をサポートできます。

3. 定期的な見直し

遺言書は一度作成すれば終わりではありません。財産状況の変化や家族関係の変化に応じて、定期的に見直しが必要です。

まとめ

遺言書は親御さんの最後の意思を実現する重要な手段ですが、書ける内容と書けない内容があることをご理解いただけたでしょうか。

特に遠方にお住まいの場合、親御さんの財産状況や意向を正確に把握することが重要です。また、法的に有効な遺言書を作成するためには、専門家のサポートが不可欠です。

親御さんの大切な想いを確実に次世代に引き継ぐため、まずは気軽にご相談いただくことから始めてみてはいかがでしょうか。適切な遺言書があることで、ご家族の負担を大幅に軽減することができます。


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寄稿者:司法書士 渡邉 健介